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公共図書館の非正規問題の根元は正規の働きぶりにあり

 ちょっとタイトル煽り過ぎかなぁ、とも思うのですが、常々私はそう考えているという話。

 まず、委託だ指定管理者制度だを吊し上げるのに、あれは官製ワーキングプアだと断じる人々・団体がいらっしゃいますが、民間と直営の非正規でそれほど待遇が違うとは思えないんですよね。時給や日給がそれほど違う訳でもないし、働かせ方が過酷になる訳でもないし(もしそうなら直営時が緩すぎたということを確認してもらいたい)、立場上の責任がものすごく大きくなるでもないのではないでしょうか。ただ単に、民営化や指定管理者制度で人件費を削減しているというのは、正規の数を減らしている訳で、自分達の席が減る事に対して、非正規をダシにした現役公務員(正規職員)の詭弁的抵抗ではないかと。ということで、直営、委託、指定管理者制度での違いを論じてもあまり意味がないので、以後一律に考えます。

 で、図書館の非正規は待遇が悪いという話。そうですね、あまり広い視野で見たことはありませんが、いくらかの経験から言うと、図書館の非正規は他の役所の非正規よりよく働いている(もちろん例外ありですが)とは思います。そういう意味では時給が安いかもしれないですね。しかし、それでも図書館で働きたいという人が多いために、別にこれ以上時給を上げなくても、雇う側は困らない。個人的には司書資格がもう少し評価されてもいいがと思わなくもないですが、司書有資格者はご存じのとおりゴマンと溢れておりますし、司書有資格者ってだけで即戦力とは言い難いし、かといって上級司書とかほざいている業界団体もおりますが、上級司書って、正規で働いている司書しかなれないような制度設計のようなので、非正規とは基本無関係だし…という状況では、資格問題は非正規の待遇とは事実上直結してないと思うとります。

 待遇が悪いというのは「自分の労働に対して」と考えるのが一般的ですが、図書館の非正規の方々はこれに加えて「他人の労働に対して」という少々精神的な問題も抱えているのではないでしょうか。もちろん同じ境遇の同僚と比較してもあるかもしれませんが、それはどの職場にもある話でして、ここでは自分を統括する正規職員に対して、という意味です。そう、彼ら正規は自分たち非正規より、2〜5倍以上の給料を貰い、有給休暇も多く、かつ定年まで身分が保障されながら昇給・昇進していく存在ですから。もちろん、そういう待遇を対価として貰うべき労働をしていれば、非正規も変に羨んだり、自分を諦めたりしないでしょうが、特に公立図書館の事務でやってくる職員の質は悪いことが多い。その辺に問題の根元があるように思えます。

 結局、表面的に正規が非正規の境遇を憂うだけでは、問題は解決しないのです。また非正規が現にこれだけがんばって正規並みに仕事をしているのだから、それに応じた待遇にしてくれよという主張も、根本的解決には繋がらないでしょう。善悪はともかく、図書館だけ特別にそのような制度にすることは、事実上不可能ですから。

 ではどうすればいいのか。私は、この非正規・正規の待遇の差は、何によって生じなければいけないのかを考えることが必要なのではないかと考えています。境遇を変えることが難しいのであれば、正規、非正規の境遇格差に見合う仕事格差をつけるべきなのです。(ここで絶対に勘違いしてほしくないのですが、非正規に単純作業しかさせないとか、重要な仕事は任せないという、幼稚な二元論的解釈はしないでいただきたいです。)非正規率の高い図書館では特に、役職のない一般の正規職員ほど非正規職員を束ねてマネジメントする能力が必要ですし、非正規ではできない役所とのやりとり(予算、人事、広報etc)も正規ならではの重要な任務です。もちろん図書館での経験があれば、内部業務でも非正規を指導し助言するだけの役割も担わなくてはいけません。むしろ、そういうことがきちんとできて、非正規職員が気持ちよく働く環境を提供できる正規職員であれば、非正規職員だって安月給でもモチベーション高く働いてくれると思うのです。それが実現されていないからこそ、非正規の不満が充満している、それだけのことなのではないかと。

 こういう正規と非正規の役割分担がなされて初めて、正規と非正規の適正な人事配置や、業務委託・指定管理業務の適正な範囲の検討というところに入ることができるんじゃないかなぁ、と。正規がカウンターに立てないとニーズが分からなくなるという低次元な論議を見る度に、そんな図書館は指定管理者制度を全面的に導入した方がいい図書館になるだろう、と私はいつも頭でつぶやいてます。