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公共図書館サービスを来館者アンケートで計る危うさ

 ・大分合同新聞 「評価まずまず  県立図書館の満足度調査」(2009.1.16)

 もちろん、サービス改善に利用者アンケートを実施することを否定する訳ではありませんが、それのみを頼りにするのは(どの公共施設でもそうですが)非常に危険で、かつよく陥っている状態ではないでしょか。

 先日、薬袋先生から「図書館の入口には、飲食店のようにメニューを用意しないと」という話を聞きましたが(この図書館ではこういうサービスをしています、が入口で分かるようにしなさいという主旨)、公共図書館の現状を考えると、個人の来館者にのみアンケート調査するということは、「メニューはないけど客は口コミで牛丼屋らしいと認識している店で、何を食べたいですか?どうしてほしいですか?といきなり聞く」ようなもの(もちろん「牛丼」=「貸出」。例えが下手すぎ?)。牛丼を食べに来た客にアンケートしても、「牛丼を食べさせろ」「牛丼をもっとうまく、安くしてよ」という回答しかないのは当たり前。でも、実はその店は総合レストランで、和食も洋食も中華も一通りあって(牛丼以外が不味い店が多い気もするが)、人員や設備投資などその為の体制をとっている。でも、メニューが提示されていない。せいぜい、一部の店で弱々しく「牛丼以外もありますが…」と店員がぶつぶつとつぶやいている程度。
 さて、この状態で上記のようなアンケートで分かるのは、牛丼屋としての評価であって、レストランとして如何なんて分かる訳がないのです。だから、このアンケートのみを頼りにサービスを改善し、運営していくということは、「客受けする牛丼屋になる」ということなのです。儲かる店かどうか、営業が継続できる店かどうかは知りませんけど、現在の顧客の多くを満足させることだけはできるでしょう。

 だから、せめてメニューを提示してから、アンケートはするべきではないでしょうか。まして、公共図書館は普通の飲食店と違い、すべての住民が出資者なのですから、来店しない人の意見を聞くことも重要です。

 そして、県立図書館であれば、真っ先に意見を聞くべきは県内の市町村立図書館等ではないでしょうか。県立図書館が今の来館者にのみ擦り寄れば、地元の大きな市立図書館にしかなりません。県立であることの意味は、県立図書館自身が根本的理念として据えておかない限り、誰も指摘も喚起もしてくれないのですよ、残念ながら現状では。県立図書館がでかい牛丼屋に看板を掛け替えた途端、じゃあカウンターだけじゃなく運営全てを、全国的に実績のある吉○屋に任せればいいじゃん、で立派なチェーン店のできあがり、というストーリーが見えるのですが。