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財政難による県立・市町村立の役割分化

 ・下野新聞 「資料費全国最下位 本年度の県立図書館」 (2007.11.10)
 ・毎日新聞 「公立図書館:資料費、5年連続減る 財政難で削減、「情報蓄積」に赤信号 /群馬」 (2007.11.22)

 資料費が減れば相互貸借が増える。そりゃそうだ。だけどリクエストに対してその場しのぎで相互貸借しておしまいでは「将来『なぜあの資料がないのか』という指摘が怖い」でしょうな。特に県立(でもそういうコメントが県立から出てくるだけまだ良い方か)。

 そろそろ公共図書館も組織的な分担収集しないと立ち行かないのではないだろか。もちろん資料費減額阻止もやるべきことなのだろうけど、財政当局に訴えただけで自己満足されても購入資料は減るばかりだし。確かに近隣の市町村立どうしで
「今度のハリーはうちがもらうけん…」
「いやいや、おたくはこの間ケータイ小説ごっそり購入されたでしょう、今度こそ…」
などという不毛なベストセラー「購入権」争いを繰り広げなさいとまでは思わないが(近い将来そうなるかもしれないけど)、例えば群馬県立が「ベストセラー小説などの娯楽作品」や「スポーツ新聞」を切り詰めているのなら、それらは後に県内の市町村立が廃棄する際に寄贈してもらえばいいし、スポーツ新聞ぐらいなら近隣の市町村立間でタイトルかぶらないようにする配慮があってもいいのではないだろうか。こういうのは本来の県立と市町村立の役割分担のはず、まぁ今更、財政難によるコストカットで浮き出てくるのも何なのですが。大雑把にいうと市町村立はサービスフロント、県立はバックヤードにシフトしていくしかないのかな、と。

 また昔話で恐縮ですが、私が県立にいた当時は、まだ市町村立との定期便を県負担で実施しはじめた頃で、県立と市町村立の相互貸借に利用しておりました。すぐに市町村立から、市町村立間の相互貸借にもその便を使いたいと要望が来ました。が、週1便ということで県立を経由すると2週間以上かかるとか、紛失時の責任が県立ではとれないとか、そもそも市町村立間の運送費を県費で賄うのはいいのかとかあって、実現は私が異動した後のことになりました。で、1年ほど前でしたか、県立の相互協力室(相互貸借などの作業するとこ)に久しぶりに行く機会がありまして、部屋に入ると市町村別に区分けされた棚に見慣れない運送用袋が大量に置かれておりました。何ですか?と聞くと、この袋は市町村立間専用の袋で、県立では発送元から発送先のコンテナに移し替えるだけの作業をしているとのこと。そっか、やっぱ要望どおり定期便活用されてるのね…って、つまりこの資料たちは県立には所蔵してないってことだよね?(市町村立の相互貸借の優先順位として県立→県内他市町村立→他県なので)、1週間分でこんだけということは県内の市町村立にあって県立にない資料って想像してたより相当あるってことじゃ…結構ショック。
 もちろん市町村立がそれらの資料をずっとストックしてくれれば、県内に1冊は残ってるということなのでそれでいいのですが、でも大半はいずれ廃棄するか、リサイクルと称して住民にばらまくよなぁ…。担当に市町村立には資料廃棄前に県立の所蔵確認をしてもらってますか(なければ寄贈してもらう)?って聞いたら、特に依頼してません、とのこと。うぎゃ、そんなもんなのだろうが、そんなもんでいいのか?確かに県内になくても全国のどこかにはあるから、リクエストがあった時にそこから借りればいいもん、ということなのかもしれないが。でもさ、もう県内の流通網ができてるんだから、県立が自館OPACをちょちょいと改良して、市町村立向けに廃棄予定資料の書籍JANコード読み込むと県立の所蔵状況が判明する簡易なシステム作っておいて、未所蔵は次回の県立行きコンテナにぶち込むだけのことなら予算なくてもできるでしょ、ってつい口から出てしまった…。既にそういうことしている県もあるかもしれないけどさ、県立と市町村立って相互貸借以外にも協力すべきことは十分あるよとは思う。

 まぁ当然県立だって無尽蔵に書庫がある訳ではないし、また定期便は(東海地方は)近県間にも広がっているので、将来はそういうシステムを近県単位で確立していくことになるかもしれないなぁ、とは思った。最終的な収蔵の責任分担としてA県は0類、B県は1類…とかね。ただその場合9類はどうするのか、ちょっと考えてみたけど妙案は思い浮かばなかったが。

G.C.W. Eメール URL 2007年11月24日(土)20:53

この手の話で,多少本筋とはずれますが,最近冷や汗をかいた記憶があります.ある雑誌(それはまったく学術とは縁の無い,ただし風俗史的には非常に価値があると思われても不思議じゃない,タイトルを挙げれば誰でも知ってるモノ)のコピー依頼を受けて,参照不完全(元ネタの引用書誌が無茶苦茶で,とても依頼ができる代物じゃなかった)でつっかえしたのですが,そのついでに調べてみたら,この雑誌の完全な所蔵がどうやら全国にひとつもない(恐らく発行元か個人蔵のみ)ことを不完全な調査とは思いますが確認してしまい,これが以前「文藝春秋」で林望が批判していた「(書誌学的に)残っていない」事態かと,慄然としたことです.依頼者の指導教員も「公共なら所蔵があるかと思ったのですが・・・・・・」と驚いていた次第.
それにしてもこの雑誌,あれだけ有名なんだから誰かが総目次・総索引を作っていそうなものなのですが,探した限りではそれも見当たらない.もちろん,雑誌記事索引にも引っかからない.服飾関係の方,何方か科研費もらって作りませんか(^^;)?

tohru 2007年11月24日(土)22:21

>G.C.W.様
 コメントありがとうございます。公共ってもいい加減なもので、都道府県レベルでも国立国会があるさという意識がどこかにあるような気がします(実際NDLとて完璧じゃないことぐらい都道府県立の司書なら経験上知ってるはずなんですが…)。
 日本の図書館における雑誌は予算も扱いもまさに「消耗品」ですからね。まして公共図書館が(勝手に)判断する資料的価値は、どれだけ名が通っていようとも通俗的なものほど低く見積もられてしまいますから。
 公共図書館間の関係は、どうにも相互貸借の時ばかり強くて、資料収集やら書誌作成では相当薄いので、後になって全国どこにもストックされてない資料が発生するのでしょう。
 それ以外でも、今だコミックなどは出版社によって全然NDLに納本されてないものがありますからね、将来「残っていない」事態になることは確実ですし…。