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個人情報は捨て、要らねという図書館運営には踵落としを

 ・Garbagenews 「名簿は「触らぬ神に祟りなし」だから廃棄しろ・個人情報保護法が図書館運営にも影響」 (2007.1.10)

 最初に重箱の隅を突いておくと、国立・公立図書館の場合、国や地方自治体等は個人情報保護法の個人情報取扱業者には該当しないのでこの法律は対象外となり、個別法や各自治体の個人情報保護条例があればそれに従って個人情報を扱うことになるし、更に条例でも図書館資料は適用除外となっている場合も多くて、条例がない場合も含めてその場合は図書館が独自に判断することになる。だから、正確には個人情報保護法のせいで、ということではなく、個人情報保護の気運の高まりで、と捉えなければいけないのです。とはいえ、じゃ独自に公開・非公開の判断をしようとする市町村立図書館がなんぼあるんじゃ、というのがこの話の本質なんだけど…

 いつもしつこいが、やっぱりしつこく書きます。結局、今の図書館は資料保存機能を担う気がないからこういう事態が発生するんだと思うんだな。面倒の元は捨てる、収集しないという意図が図書館にあるという指摘は、大変的を射てるんじゃないだろうか。
 そりゃ図書館はどんな名簿でもすべてオープン、にすべきではないですよ、今どき。それに、大学のセンセが研究に使うのは○で、どこの業者とも分からぬ者がコピーするのは×、というような利用の選別に対しては公共図書館は変にセンシティブで、すぐに利用者差別だと言われたりする。もしくは利用目的なんて自主申告だからそんなん信用できん、という話も出たり。うん、確かにカウンターで聞き取った利用目的を鵜呑みにして個人情報晒すのはやってはいけない行為だが、その判別が面倒だからと資料を捨てたり収集しなかったりするとすれば、ほんと図書館とは何だと考えて運営しているのやら。
 さすがに社会的情勢を鑑みれば、今どき図書館と言えど簡単に個人情報を提供してはいけない訳で、どんな利用目的であっても一定期間は利用不可にするような措置もやむを得ないとは思うのだが、個人情報は非公開情報じゃなくなる時が来るのよね、時間が経つと。例えば国立公文書館の利用規則の第4条及び別表にあるように、かなりセキュアに扱うべき個人情報でも一定期間の後に公開されるかもしれない、という運営をしている機関もある(もちろんすべてではないが)。まぁ、こんな運営を厳密にするのは途方もない時間と労力が必要なのは重々知っていますがね。でも例えば、江戸時代の誰かの日記が資料として収蔵されていて、その人の生活が赤裸々に記されていたら「これ、個人情報だから非公開ね」と閲覧を一律に断る行為が理にかなわないことは理解できたとしても、そういう類の資料を自分たちが予め収集して然るべき時期まで寝かしておくという発想、とにかく個人情報だからと資料を廃棄したり収集しなかったりというのは、将来のそういう資料利用の機会を片っ端から潰す行為だという発想が図書館職員には欠落しているのだろう。特に郷土的資料は、その地域の公共図書館が収集しないと誰も保存してくれないよ、公文書館がほとんどない、あるいは機能していない日本ではさ。「閲覧できない資料を所蔵する必要は無い」の閲覧とは所詮現時点での閲覧のことしか指していないんだよね、眼前のことしか考えていないんだから…

 何度も言います、図書館資料を消耗財としてしか扱わない図書館運営が自らの首を絞めているという構造に早く気付かないと、公共図書館はもはや生き残れないと。図書館が何であるか、社会的な認識も含めた議論と運営の改革をそろそろ業界として考えないと…簡単に潰れるよ、公共図書館は。まだ見ぬ利用者を待って資料が書庫に眠っている状態に価値を見いだすことは、もはや望めないということなのかなぁ…何でも直ぐに役立たないと無駄というのが社会的潮流だとすれば、そこに抗することこそ本当の公共性だと思うのだがなぁ…

tohru URL 2007年01月12日(金)23:15

一応フォローしておくと、個人情報保護法の定義による個人情報は生存する者の情報ということなので、本人の死後は個人情報でなくなりまする。エントリーはその辺曖昧なので混乱を生じるかも知れませんが(法施行以前の自分のとこの条例の定義に慣れてしまってるので、どうも個人情報を生存者に限定することに未だ違和感があるのだ)、こだわる方は死後については「プライバシー情報」と読み替えてください。