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指定管理者制度が成功するのは…

 神戸新聞 「県内公立図書館サービス拡充 「民」並み運営で「官」巻き返しへ」 (2006.12.6)

>「公立図書館は、“読まれる本”だけでなく、幅広いジャンルをそろえなければならない。」(三木市担当者…なのかな?)
→指定管理者制度導入の検討でこれに気付いた三木市は当たり前の認識を持っただけのことであって、そもそもこういう公共図書館の原理を為政者、行政、住民、そして図書館関係者までもが認識できていない状態で、公共図書館への指定管理者制度導入の是非を議論されている現状が異常なのである。もちろん指定管理者制度を導入するなという安直な主張ではない。その上であらゆる側面からの議論で是とする結論はもちろん「あり」である。

>「図書館業務を請け負う専門業者はない。特異性の高い業務が多いため、行政が直営する傾向は変わらない」(日図協)
→TRCは嫌々請け負っているし、本務は別だからこれだけ実績あっても「専門」業者ではないということですかね。専門性ではなく「特異性」の高いという言い回しが何を意味しているのか…まぁ直営を維持したい意向があるとすれば、何とも安穏としたコメントのように思えるが。

>「明石市立図書館の指定管理者は、委託の際に、これまで市が運用してきた選書基準や集書方針を受け継ぐ協定を市と結んだ。同館は「協定から逸脱しないかぎり、選書の質が落ちることはない」とする。」
→いくら基準や方針を明文化したところで、相当潤沢な購入予算がない限りは、それらに「厳密に」従った収集(=基準を満たす資料の全収集)なんて絶対不可能なんだから、結局は資料を選択する側の意志は少なからず反映されることとなる。だからといって、全ての資料を機械的に判断しながら予算内に収められる基準なんて絶対できないのだから、「協定から逸脱しないかぎり、選書の質が落ちることはない」というのは断言できないはずである。つまり、本当に質を落とさないようにするには、指定管理者に任せっぱなしではいけないよ、絶えず市はチェック入れなきゃ(ほんとは利用者が、と言いたいところだが)、ということなんだけど、それでは委託している意味がなくなるやね。市側にチェック入れれるだけの人(指定管理者以上に知識と見識のある職員)と手間が必要になってくる訳だし、だったら選書は自分たちでやるよ、という結論に行き着いてしまうし。

 いつも指定管理者制度の問題点として感じているのが実はこの点で、まともに制度を機能させるには指定管理者に対する役所の十分な監視が不可欠なのだが、肝心の役所の担当者がその施設について大変無知であるというケースが大半(そりゃ普通の事務職員で特に勉強しなきゃ素人のままさ)で、例えば図書館、美術館、博物館相手でも予算の削減度と入館者数(貸出数)だけを評価指数にされたら、指定管理者はそれだけを追い求めるしかなくなる。じゃあ役所側が勉強しなければいけないじゃんということになるが、真面目に指定管理者を監視できるレベルの職員を養成・配置するとすれば、もう指定管理者制度ではなく直営で行えば済むのである。つまり、そういう意味で指定管理者制度をまともに機能させようとすることは大きく矛盾した行為であり、制度導入が成功するとすれば、役所を完全に凌駕した見識のある指定管理者がストイックに運営するか、直営時代の公務員の働きがよほど悪かったか、のいずれかのケースしか私には想定できないです。