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院生からのレファレンスで

 珍しく公文書についてのレファレンスを立て続けに2件受ける。というのも、普段は公文書館を標榜していても専ら古文書や絵図ばかり関心を集めているから「珍しい」のだ。まぁこれはうちに限った話ではなく、F県の公文書館も公文書では人が集まらないから、開館後どんどん歴史資料に重点が移ってしまっているということを担当者から聞いたことがある。歴史好きは近代以降は歴史ではないという人が多いということなのか。まぁ、公文書もあと100年保存しておくと歴史資料に化けるのだろうけど、公文書で人を集めるというのは現状では非常に難しい。公文書館は図書館以上にその役割(保存機能)と、お上から求められる成果(利用者数などの表面的数値)に大きな剥離を生じている施設なのだ。古文書を人寄せパンダにして100年保たせられるかなぁ…

 閑話休題、1件は東京の院生からのもので、レファレンスというより閲覧希望に近いのだが、岐阜まで行けないからコピー送ってけろ、というもの。うちは機械複写禁止やしそもそもコピー郵送サービスはしてないのだがなぁ…とりあえず該当資料を出してきて、個人情報なし、著作権なし、ページ数少なし、文字サイズ大であることを確認し、文字判読可能なレベルのデジカメ画像にして特別にメールで送付してあげる。館としてルールがないので、この対応の善し悪しは量れないが、後日丁重な手紙をいただいたので役には立ったのだろう。こちらとしても、ネットの目録データから利用に結びついた初のケースだったし。惜しむべくは、資料の内容が岐阜とは何の関係もない武蔵野市の件についてだったというところだ(笑)。仕事が地元に還元できてないなぁ…地方公務員としてどーだろう。

 もう1件は私の卒業大学の図書館から。もちろんそんなこと向こうは知る由もないだろうが(何せ大学に就職先報告せずに卒業してきたからなぁ…)。内容は……戦中の「防空法第5条の5第2項に基づく内務省告示第○号にある関係図面の有無」だと?…説明こんだけ?うちには当時の告示が分かる資料ないんだけども。防空法の条文ってデフォで知っているべきことでつか?不親切やで、ほんまに…だいたい、市や県の図書館にはレファレンス済みなんか?何を調べ、何を知っているかも知らせないで、それに代わる地図もないかって言われてもなぁ…原図がないことは分かっていたが(戦中の公文書は空襲でほとんど焼けた)、ネットで基礎情報を調べた後に所蔵調査して、ねーよという回答と共に若干の参考資料と、県図に「大垣市の建物疎開の範囲が分かる地図」って聞きな、と嫌みを丁寧に添えてみた。それにしても、一般利用可能な公的機関への所蔵調査以外のレファレンス(郷土関係などその館でしか受けられない類のもの)って、所属大学の図書館を通すべきなのかなぁ…こういうケースでは、大学図書館はこういう機関に参考資料があるかもよという紹介までは仕事だと思うけど、大学院生がその分野の研究しているんだったら、その機関へのレファレンスからは本人がやるべきなんじゃないかねぇ…現に今回みたくどこまで知りたいのか、何を調べたのか、こちらでは把握できなかったし。なんか今回のレファレンスは院生が図書館に調査丸投げ的なニオイすら感じちゃったのだよ、京都から岐阜なんて近いんだから院生なら自分で来いよ!ってのも手伝って(相手が分からない以上、特段の事情の有無ももちろん分からないが)。大学図書館の方々、他機関紹介ってどこまでを業務の範疇にしてるんですかね?

※アップ後、一部修正。コメントも見てやってください…
※※一度修正しましたが、後半をこちらに書き直します。ただし何度も修正したりいきなり削除では更に混乱を生じますので、このエントリーはこのまま残します。

tohru 2006年11月16日(木)15:12

 文末について補足。はてブに所蔵確認までは通常業務だというご意見があったので。
 確かに通常の「この資料どこの館にある?」ならWebcatなりOPACなり紙目録なりで検索して「この館にある、自分で行くか?相互貸借が必要か?」となるでしょうし、所蔵館が見つからなければ、ありそうなところに有無を確認するところまではするでしょう。
 ただ、今回の場合原図ということであれば、一般的な資料ではないので対象館は2つ(うちと市図)しかないこと、うちは資料目録をHPで公開して一般からのレファレンスも受け付けていること、また資料貸出はしていないことなどを加味すると、ちょっと図書館が過保護かなぁと思っただけのことです。代わる資料まで求めるのであれば、それは所蔵確認の域ではないし、その場合本人からヒアリングできればより的確に回答できただろうから、直接レファレンスくれた方がお互いの利があったんじゃないかなぁ、ということで。
 図書館間の様式で機械的に公文書館にレファレンスしてきたってのに引っかかりを覚えたというのもちょっとあるけど。えっ、お前は司書資格持ってるだろうって?うん、まぁ、だから一応所蔵確認以外の部分までフォローしたけど、他の職員だったら「無」に○うって終了だったろうね。

myrmecoleon 2006年11月17日(金)10:11

はてブの人です。億劫がってはてブですませてしまってすみません;

大学図書館としては,相手館のOPACや紙目録で探して,それでも見つからない場合に持っていそうな館に相談することは,わりとよくありますよ。また,はてブで他の方も言っていましたが,大学図書館の業界では,トラブルの回避等のために他館利用時には所属の図書館を通すのがルールですので,その延長とすれば妥当な対応だと思います。
もちろん,相手館の状況によって考え直す必要はあります。公文書館への対応として適切なものかは今後考慮する必要があるでしょう。ただ,図書館から問い合わせることは(良いか悪いかは別として)それほど特殊な対応とは思いません。

ただし,通常は「利用者が〜〜というような資料を探しているのですが入手方法についてご教授願えませんか」のような形式で問い合わせるものなので,いきなり「防空法第5条の〜〜」などとやるのは正直ずさんだと思いました。すでに何を調べてるか,それで何が分かってるかを記載するのはレファレンスの基本ですからね(何も調べずに丸投げだったとしたらさらにずさん)。どちらかといえば,こちらの点に落ち度があるように思えます。

なお,直接確認しなければどれが必要かわかりづらい資料(古文書など)の場合は,相手館に連絡の上で利用者本人に行かせることもあります(というか,普通は利用者の方からそう申し出る)。ある程度ケースバイケースでしょうか。
近県であること,一般からのレファレンスを受け付けていることなども考え合わせれば,今回のケースは判断上微妙なところかもしれませんね。