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県立図書館の誘致

 ・毎日新聞 「選挙:大村市長選 松本崇氏、4選出馬を表明」 (2006.3.2)

 過去記事なのでリンクは張りませんが、この市長は昨年も知事に新県立図書館の市内設置を要望したものの、新県立は長崎市立図書館が出来てからということで知事にいなされているらしい。まだ旧町村立を除き長崎市に正式な図書館(H20.1開館予定)がないというのもどうだか、と思いますけど、市長選の公約に県立図書館の誘致を高らかと謳うというのはなんだかなー、と阿藤快のように思うわけです。
 一応理論としては、長崎市よりも県央の大村市にある方が地域的偏在が解消され県内全域から利用できるようになる、ということらしいのですが、大村市には大村市立図書館があるものの、市議会質問によると開館後30年以上が経過し、「資料倉庫みたいな形で2階を使って」かなり手狭になっているようですが、なかなか財政状況が厳しく改修や新館建設に向かえないお家事情があるようです。そこで市長は同じく建替時期に来ている県立図書館を市に誘致して、県に市立図書館の役割を担って貰おうと考えた訳ですな、ふむふむ。
 公共施設というのは地方では重要な政治的要素です。市町村合併の折も市役所の位置で啀み合う住民をなだめるため、市役所を分割した事例はたくさんあります。特に教育委員会だけ分離されることが多く、本庁から車で30分の旧役場にあったりします。
 でも県立図書館の誘致はなぁ…そもそも市民への図書館サービスは市の責任で行うべきことで、県立はこれを支援する関係でなければならないと考えております。それが理想論だと言われようとも。県立は市立の代わりになってはいけないのだが。そりゃ、近くに新しい県立図書館ができれば住民は便利でしょうよ。でもねぇ…市立図書館を30年以上も運営しているのに、お金ないから県立を誘致して県に図書館サービスを委ねるということだとすれば、それは結構な市の行政サービスの怠慢ですぜ。誘致に成功したら大村市立は衰退するのは必至だけど、県立あるからそのままでいいや、ということで市立図書館滅びます…
 県立の役割は市町村支援というのは古典的思考だと思われるかもしれませんけど、現在図書館が滅亡へと向かっているのは、市町村立図書館が漫然と貸出至上運営を続け、県立も自らこの流れに便乗してしまった、そしてそれぞれの図書館の使命は何であるかを考え体現しないまま、時代が自治体の財政難という局面に突入したからだと思うのです。市長が、そして市民が県立図書館とは市立図書館の大規模版、という認識しかないとすれば、それは図書館とは何であるか、何でないかを説明しなかった(できなかった)図書館関係者の責任によるところではないでしょうか。このままでは本当に図書館が滅び去る日も遠くない気がします。