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レファレンスは誰がどう対応するべきか、という問いなのでは?

 ・読売新聞「図書館相談 まるでクイズ…「大阪府民やり過ぎ」知事苦言」(2009.9.25)
 ・朝日新聞「図書館が受ける「高度な」質問とは?」(2009.9.26)

 これらの記事に対する反応を大きく分けると、図書館関係者の「レファレンス対応は重要な図書館機能であることを橋下は理解していない」というものと、ネット住人たちの「そんな質問は自分でググれ、ぼけ」というものの2つでしょうか。

 まず、どんなくだらないレファレンスにも公共図書館は対応するべきだ、という図書館をよく知る者の意見については、確かにその通りだと私も思います。現場にいたときに、まるで秘書相手のようにくだらぬ質問を自分で調べることなく頻繁にメールレファレンスする利用者がいて、いい加減にしろよと思ったことはありますが(調べ方を教えても自分で何とかしようという気がまるでないのが余計にね)、情報検索スキルは個々様々であることを前提として、基本的にはレファレンスは全て受けるべきです。

 ただ、今回の橋下知事の意見も、行政的観点ではありえる意見であるとも思います。対応が高コストであるレファレンスの内容がこのように「しょうむない」(シロウト的に、という意味で)のであれば、何故府立がそれを引き受けなければならんのか、という意見。これ、例えば資料収集では市町村立・県立・国会図書館の役割がゆるやかながら分化されているのに、レファレンスではどうだろうか、という問いに変換できるのではないでしょうか。もちろん、レファレンス対応とは原則、収蔵資料紹介な訳ですから、収蔵資料構成によってその役割はある程度分化できるでしょうが、例え収蔵資料になくても、ネットやデータベースで簡単に答えられるレファレンスは誰が対応しなければないのか、反対に言えば府が対応すべきではないという意見に反論する根拠はないのではないでしょうか。
 もちろん、そんなの府の身勝手以外の何ものでもない意見ですが、でも府立とは何かという問いとしては少し的を射てる気がして、貸出からレファレンスに路線変更すれば「これからの図書館」として生き残れるという考えだけでは甘い、レファレンス対応の根拠と中身も再考しなければという認識を関係者は持たなければならないでしょう。

 最後に、レファレンス対応は答えを出すクイズとは違うということは、強調しておかなければならないでしょう。あくまで所蔵資料を紹介するもので、しかも出典の正確性や信頼性も含めての対応なのです。それこそネットの知恵袋との違いなのですが、これは利用者がどのレベルの回答を求めているかの問題なのです。とりあえずの回答で満足なら、知恵袋で対応させてもいいでしょうし、それ以外でも利用者が自分でネットや所蔵資料を調べられるようにスキルを伝えることも公共図書館の重要な役割だと思います。その1つとして、レファレンス対応のプロセスも利用者に回答して、それほど高度でないものは今後は自分で探すというスキルを身につけさせることも必要なのではないでしょうか。図書館は単なる知恵袋ではないのですから…