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県立図書館は「中間自治体」立であるので

 年度の変わり目で少々更新間隔が空いてしまったので、生存確認のためにメモ的エントリ。一応、専門(?)の県立図書館ネタということですが、資料調査も時間的に厳しいので、とりあえずの感覚メモですが…

 最近の県立図書館はどこも運営的に厳しいようですが、ここに至るパターンとしては、大きく「1 バブル(ITバブル含む)期建替型」と「2 バブル期非建替型」に分けられるのかなぁ、と考えています。

1の場合、
 バブル期の建替に際し、旧来の県立機能の放棄、直接貸出の重視、ホール・会議室など施設としての多角化に向けた建物設計と予算・人事配置
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 オープンからしばらくは来館者・貸出冊数増で好評を得るものの、経年による飽きと資料費等の圧縮で徐々に先細り
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 県が財政難に直面、無料貸本屋に多額の運営費を費やす(と当局に認識されている)図書館に対し、指定管理者制度を含む財政的圧力が鮮明に
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 しかし、近年の利用者減少傾向からも激しい予算削減を飲まざるを得ず、方向を見失う
 (例)徳島県立図書館(先般の新聞記事によると徳島市立よりも資料購入費が少なくなったとか…)

2の場合
 バブル期に建替を逃す
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 旧来の運営方針のまま、建物の老朽化が進むと共に、また、資料収蔵スペースの狭隘化に悩まされストック機能が果たせなくなる
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 新館建設のような予算増加のきっかけもつかめぬまま、利用が低調のまま財政難を迎える
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 利用の少ない公共施設として当局から突き上げをくらうも、少額予算と老朽化した建物では改善策も見出せず、方向を失う
 (例)長崎県立長崎図書館

 いずれも困った状態に陥っていることに違いはないが(この状況からの脱出を図っているのが1のケースだと鳥取県立図書館、2のケースは…どこかな?)、1はバブリーな建物設計により維持管理費と、司書を大量採用している場合は人件費が嵩み、2は建替も望めず予算も1よりも少ない点で、それぞれ苦しんでいることでしょう。

 県立図書館としての機能(市町村立のバックヤード機能など)を考えると、運営方針は2の方がまだ残っていると考えられるが、残念ながら資料のストック場所の問題で物理的に機能が果たせず、結局1も2も不十分…という気がします。

 あまり司書には意識しにくいかもしれませんが、行政改革的視点で県立図書館を厳しく見ると、「何故県が図書館を運営しなければならないのか」という命題にぶち当たるはずです。国-県-市町村という繋がりが(上意下達的には)緩やかな公共図書館という分野では、県立図書館の存在意義が当局には理解しにくいと思います。まして1のように県立としての機能を一旦放棄して直接貸出による利用で存在意義を示してきた館では、この題に答えることは難しいでしょう。何せ県庁所在地に県立があるとして、その周辺の住民にばかりサービスする理由は県にはないのですから(長崎県立は長崎市立が最近できたということですが、基本的に県庁所在地の市立図書館はある程度立派であると考えると、そこでのサービスは偏在的な二重行政と考えられる)。ここで、某県立のように(来館者・直接貸出数の増加のみを狙った)運営の市立化を目指すと、遠からず当局からの上記指摘で頓挫すると予想します。県は国と市町村の中間自治体であるという立ち位置を、県立図書館としても意識することが、昨今の財政難によって不可欠になっているのです、きっと。

 訪れたことがないのですが、兵庫県立図書館は明石市立図書館と隣接していて、内容によっては利用者を市立図書館に振るとか。まだ漠然とした案ですが、高知県立図書館と高知市立図書館の建物合同化という話もあります。こういう形態でも生き残れるような運営を、県立図書館は模索していくしかないのではないかと、最近は考えています。