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指定管理者制度導入は民営化にあらず、しかして公共図書館での実態は…

 「指定管理者制度導入≠民営化」は、「指定管理者制度と公共図書館への導入について」のレジュメでも、拙ブログのエントリでも、今まで強調して書いております。

 が、こと公共図書館においては、実例が重なれば重なるほど、「指定管理者制度導入=民営化」という認識が浸透し(しかも導入賛成派も反対派もほぼ同じような認識というのが何とも不思議な構図なのだが…)、更に悪いことに実態がその通りである例が多いようです。

 本来、指定管理者制度というのは、公の施設の運営管理を指定管理者に丸投げする制度ではありません。地方公共団体は、自らの施設としてその機能を発揮するために運営の枠組みや方向性を決定し、その実現のために指定管理者に指定管理料を支払って運営をしてもらう、指定管理者はその指定管理料(+入場料や施設使用料など)を元に地方自治体が目指す施設の実現に向けて、その専門性などを以って創意工夫しながら運営する、そういう制度です。

 指定管理者は、地方自治体から指名される時も、指名後も指定期間中は1年に1回(以上)、事業計画書を地方自治体に提出し、計画が承認された後でないと施設運営はできないのです。また事業終了後も事業報告書の提出と承認の手続きがあります。もちろん、指定管理者側からこういう施設にしたら如何ですか、こういう方向性は如何ですか、という提案に基づいて、地方自治体と方向性を探るやり方もあるでしょうが、基本は地方自治体がその施設をどう運営したいのか、いわゆるビジョンがないことには、指定管理者の事業計画や提案を検討することすらできないのです。

 しかしながら、実態はどうなんでしょうか…といえば、地方自治体がそんなビジョンを持っている施設なんてどれだけあるのやら、という感じです。おそらく、指名する時は指定管理料の安さで指定管理者を選定し、指定後は利用率、利用者アンケート、また外部識者による評価委員会などの評価を形だけ整えて、それほど悪い評価にならない限りは、指定管理の内容に興味はない、という地方自治体が大半なのでしょう。

 公共図書館でこうなるとどういう運営になるのか、というのはもう説明しなくても…ということなのですが、私は特に公共図書館の指定管理者制度というのは、最終形への一過程に過ぎないと思っています。地方自治体は財政難による経費削減策として、とりあえず指定管理者制度に飛びついている状態ですので、指定管理の内容なんて利用者や議員から苦情が出ない限り、気にもしないでしょう。しかしこのままあと5年も経てば、今の指定管理者の指定期間が終わる時期となりますが、多くの地方自治体は更に財政が苦しくて、指定管理料の予算も組めなくなるでしょう。そうして次の指定管理者のなり手がいなくなった時、果たして図書館をどうするのでしょうか?…つまり、先ほどの最終形というのは、指定管理者制度も維持できなくなって、廃止という選択をするということです。指定管理者制度というカードを早く切ってしまった地方自治体ほど、この最終形までの期間が短いのではないか、とも予想しています。

 一つ光明と言いますか、このような予想が外れる可能性が公共図書館には大いにあります。何かというと、公共図書館の廃止には、恐らく住民の反発が他の公共施設と比べて非常に強いだろうという要素です。これにより、政治家は簡単に図書館を廃止すると言えないのです。

 しかしよく考えてみて下さい。確かに廃止までには至らなくとも、指定管理者制度が維持できなくなった後に直営で存続するというのは、もはやそれは公共図書館の最低限の体すら成さない予算と人員しか用意できない状態ではないでしょうか。その状態も最終形と同義として差し支えないのかな、と思います。

 (いつか続きます…)