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書店に「ないない」、図書館に「あるある」が当然

 ・佐賀新聞 「「あるある本」撤去広がる 図書館は貸し出し継続」 (2007.1.31)

 書店の返品が始まったときに誰かがブログで「で、図書館は?」と書いたのを目にしたときに、「あぁ、やっぱ公共図書館ってそう思われてるのね」と苦笑いをしたんだけど、後日こうやって新聞に載るとはね。

 あーゆー事態になったとき、書店としては騒動を逆手にとって販売するという戦略もなくはないだろうけど、書店は損失なしで版元へ返品可能(店頭の本は委託販売なんで書店の財産ではない)なシステムである以上、さっさと返品するでしょうよ。まぁ、出版社倒産じゃないので急いで返品しなきゃいけないこともないでしょうけど、もっと確実に売れる本はごまんとあるんだから、スペースの無駄ってもんで。本屋の売り場ってのは面積に比して溢れまくった本の戦場ですから、敗者は去るのみ。

 一方、図書館は当然利用者に資料提供し続けなきゃいかん。記事中の佐賀市立コメントの違法性ってのが何なのか理解できないんだけど(放送法違反なら撤去ってことかい?そりゃおかしい)、伊万里市立の「内容の是非については判断していない」は大正解、いいコメントですよ。公共図書館ってそういう所なんだよ、いろんな意味で「正しい」本を揃える所じゃない。仮に図書館も撤去だとすれば、市民は書店からなくなった話題本の中身はどこで読みゃいいのさ。毎日毎日、やれみそ汁だ、小豆だと、さも正義の代弁者の振りしてしたり顔で関テレを攻撃しまくる新聞・テレビ局の報道を見て、何が番組で放送されどこが問題なのか、そしてバッシングそのものには虚偽はないんやな、等々を自分で確かめたいというのは至極当然の一般的要求だと思う訳で、幸いにも今回の番組は内容が本になっているんだから、それを公共図書館へ行って確かめるという方法があって、じゃ図書館で調べるという利用者の行動は、図書館側すれば「ご利用ありがとうございます、このような役立ち方こそ公共図書館の本来の姿でございます」って熨斗つけて資料提供したいぐらいなはずですよ。

 図書館から撤去するの?という話が社会から自然発生的に出てくるということが何を意味してるのか、図書館は考えましょうね。それと、図書館資料の利用を何事もなく当然のように「貸し出し」に限定している記事の書かれ方にも。いつまでも無料貸本屋では、書店との違いは無料でレンタルできるってのみで、比較されたら品揃えとサービスの悪さが目に余るだけだって。いつも言ってるでしょ、書店から、そして社会から消え去る本のストックが公共図書館の役目だって…

ろーじー 2007年02月02日(金)08:32

いきなりで失礼しますが
・・・図書館には「あるある」が当然なんでしょうかね?
今回の場合、はっきりと捏造があったと当事者がみとめてるわけでしょ?
開架から引き上げて「ご要望があれば提供します」の貼紙するくらいの対応はしてもいいんじゃないでしょうか。
図書館って、「何が番組で放送されどこが問題なのか、そしてバッシングそのものには虚偽はないんやな、等々を自分で確かめたい」人ばかりが利用するわけじゃなく、フツーになんか体にいいことしたい、という一般ピープルのほうが圧倒的に多いと思うんですよ。そういう方たちにとっては捏造されたウソの健康情報が載ってるとわかってる本が棚を占領してるのはムダなんですよね。
「このような役立ち方こそ公共図書館の本来の姿でございます」というのは「中の人」の言い分であって、通常の利用者は下手したら「ウソ書いてある本を並べとくの?図書館の人ってテレビ見てないの???」と受け止めるのがオチです。
不二家商品を黙って棚に並べておくような食品店と同じような印象持たれるんだと思います。

>社会から消え去る本のストックが公共図書館の役目

これも、市町村立のすべての図書館に要求するのは無理だと思うし、利用者に資することにもならないと思いますよ。

tohru 2007年02月02日(金)09:47

>ろーじー様

 コメントありがとうございます。現在、公共図書館では様々な方が利用者となっていますので、利用者はこうであるという一律的な解釈はできません。従って私が想定する利用者も、ろーじーさんが想定する利用者も、どちらもいるでしょうし、どちらが多数派かも図書館毎に異なりますので、どちらの意見も正しくどちらの意見も間違っていると解釈します。
 私がこの暴言場であるブログで好き勝手に書いていることは、現状の公共図書館運営に対する反貸出至上主義によるバイアスが強く働いていることは自覚しておりますが、敢えてそのように偏った書き方をすることはありますので、あらかじめご了承いただいた上で、個人的な思いを書きますね。
 私は理想も含めて図書館利用者の民度は世間や一部の図書館職員が思うほど低くないと思ってますし、そうなるようにすることが公共図書館の使命だと常々思っております。ろーじーさんの言われるような利用者が圧倒的というのが現状であるとすれば、記事中の伊万里市立のように新聞記事などでフォローすれば問題はない(そもそも利用者が自分で調べるのが本来だとは思いますが、あまり知られていない同様の事例であってもやはりこのように情報提供すればいい)でしょう。もし図書館が資料の内容の是非まで判断しなければいけないのだとすれば、選書時にすべての資料に対してその作業を行わないといけないということになり、予算・人員的問題はもちろんですが、司書が理解できない資料は受入しないというシステムになる危険性を指摘しておきます(専門的な理系本なんかは完全排除されるでしょうね)。もちろん、限られた予算の中で何を受け入れるかという過程において、虚偽内容的なものを排除する図書館の行動は行われるべきでしょうが、それは正しい本を提供することを目的に行われるのではなく、このような制約の結果であることが本来の理論であると考えてます。正しいかどうかは利用者が読んで判断するべきであって、それができない利用者には図書館とはそういう場であることの教示を図書館がするんだと。この考えが間違いであるとすれば、それは公共図書館に対する世間と私の認識のずれとしか言いようがないのですが、私はそんな世間にしたのはいままでの公共図書館運営の大きな過ちだという思考だけはどうしても譲れませんので。ただ、図書館の資料の扱いは食品を店頭に置く置かないは別次元だと思います。
 またストック機能の話ですが、現実論としてすべての市町村立に一切の資料廃棄をするな、という考えは毛頭ありませんが、反対に本を買う→何度か貸出→廃棄(リサイクル市みたいな無料配布も含む)のサイクルに加わる資料が大半であるような運営はいかがなものか、という意味です。現状の図書館利用者の大半はこれで満足するのかもしれませんが、図書館を利用しない多くの住民はこのような図書館は不要だと考えるようになった結果が、昨今ちょっとネット上で話題となった公共図書館不要論なのではないでしょうか。究極的には国全体の図書館システムとして、国会、都道府県立、市町村立いずれかの図書館に世の中全ての本が1つでも保存されていればいいと思っているのですが、それにしても市町村立だってそこにしかない唯一の資料(郷土資料など)を収集・保存することは義務的に実施しなければなりませんが、実際そういう市町村立ばかりではないことは非常に危機的状況だと思います。

ろーじー 2007年02月03日(土)11:12

おはようございます。
レスどうもありがとうございます。
私のほうもいきなりサンダル履きで押しかけるようなコメントのつけ方してますから、お互い「個人的な意見」ということで・・・(笑)

さて
>新聞記事などでフォローすれば問題はない

なんらかのリアクションをしてる、つまりこの問題に関して図書館は無知でも無関心でもないよという姿勢を示しておくことには大きな意味があると思います。
検証したい利用者の要求があれば資料を提供すべきだと思いますしね。ただ、書架に余裕がないのであれば開架から引き上げてその場所を別の資料に譲るべきではないかな、と思ったしだいで。
これが単なる捏造「疑惑」やウワサの段階なら別ですが、事実と認めて番組打ち切っちゃったわけですから、この事件の真相を追究したいという利用者と、健康法に関する本を求める利用者との割合でいうとたぶん一般的には後者のほうがずっと多いでしょうし、空いたスペースに別の健康法の本を並べてあげたほうがベターなのでは?(その別の本の健康法の真偽のほどは、図書館が判断すべきことじゃないですから)という、きわめて現実的主婦感覚的な意見に過ぎないんですけどね(^_^;)

購入時(というか選定時)に資料の内容の是非を判断する必要はないと私も思います。ただし、あとから虚偽的な内容であることが判った場合には対処はすべきでしょう。

>図書館を利用しない多くの住民はこのような図書館は不要だと考えるようになった結果が、昨今ちょっとネット上で話題となった公共図書館不要論なのではないでしょうか。

そうなんですか?
図書館を利用しない住民の一部は「図書館なんぞ使いたいと思わない」と考えているでしょうし、べつの一部は「図書館は利用したいけど物理的にできない」のだと思います。双方のどのくらいの割合の人たちが「いっそ要らない」と考えているのかはわかりませんが、「不要」と考える人たちはでは、「必要」としている人たちが図書館のなにを必要としているか理解したうえでそういう意見を唱えているのでしょうか?

>それにしても市町村立だってそこにしかない唯一の資料(郷土資料など)を収集・保存することは義務的に実施しなければなりませんが、実際そういう市町村立ばかりではないことは非常に危機的状況だと思います。

その部分は賛成です。なにもかも国会図書館が持っていればいい、と言うのはナンセンスだと思うし。
でも、だからこそ、全国どこでも(かつては)売れに売れた「あるある」本なんて、市町村立のレベルで保存に努める必要はない、とも思いますが。

tohru URL 2007年02月03日(土)18:49

 中立でない場での議論はなかなか難しいですが(笑)、簡単にコメントを。
 公共図書館の運営資金は税金であり、まして利用者の受益者負担が一切ない公共施設です。住民全体の必要であるという判断の基に存続する施設なのですから、利用しない人にも図書館は必要だと認識してもらわねばいけないはずです。そう考えたときに、今の無料貸本屋状態の図書館はそう理解してもらえないんじゃないでしょうかね、今の利用者の要求(とにかく話題の本を無料で貸してくれさえすればいい)に対して公共性があるとは到底考えられないでしょうから。そういう図書館を支持するからこそ来館している、目の前の利用者の要求にさえ応えれば十分だという考えは、公共図書館としては些か視野狭窄だと思います。(一住民としての私の感想を書くと、公共図書館が現状のままであるとすれば、私は期待するサービスが為されないので利用しないだろうし、金を惜しむ図書館利用者にばかり資することには税金を費やす意味を見いだせないので、図書館潰して他の事に税金使えばいいと思ってます。)
 ストック機能の件、あるある本を後生大事に保存する必要はないですが、こういう形で話題になったときこそ、今というタイミングで廃棄するのはナンセンス、ほとぼりが冷めるまで資料提供すべきじゃないの、という意味です。

ろーじー 2007年02月03日(土)21:49

>今というタイミングで廃棄するのはナンセンス、ほとぼりが冷めるまで資料提供すべきじゃないの、という意味です。

なるほど。
というか、私も廃棄する必要はないと思ってますが。
それ引っ込めて、閉架に押し込めてある他の本出せよ、というだけの話で。

>金を惜しむ図書館利用者

そういう捉え方にはちょっと異議アリですねぇ。
貸し出しに重きを置く利用者はお金が惜しいだけ、ではないと思いますよ。「本は買って読む主義」の方も多いですが、そうしなければならない理由は(本に書き込みしたりするクセのある人でなければ)どこにもないはずで、運営資金が税金であるならせいぜい利用したほうが得、という考え方もあるでしょ?
利用しない人にとっては無用の長物に見える、と言う点では体育館だって公民館だって博物館だって同じだと思います。
そういう意味では図書館だって受益者負担があっても私は差し支えないと思っています。適正な金額や負担免除対象などを決めるのは難しいかもしれませんが。

tohru URL 2007年02月03日(土)23:02

利用者を一律に考えてはいけないといいながら、自分がそのように書いてしまいましたかね。その点反省しますが、利用しない者の捉え方も一律ではいけない、利用しない者がその施設を無用であると考えるばかりでもないと思います。公共施設というものは、利用しない者に対して利用しない方が悪いと切り捨てるのではなく、様々な理由で利用しないという人に対しても存在は認めてもらえるような運営が必要不可欠なはずなのに、どうも公民館や博物館なんかと比べると今の公共図書館って目先を追うあまり、そのうち真っ先に不要と社会から断じられる可能性が高いんじゃないでしょうか。夕張市の事例を見てみると、美術館や博物館には住民から存続の動きが出てきているというのに、図書館にはそれが見られないのがその証左じゃないかと…私は財政再建に最も必要な公共施設は市立図書館だと思うんですけど、そういうことが市民も市役所も発想できないのは、市立図書館なんて無料貸本屋なんだからこの非常事態にそんなもの要らないって思われてるからじゃないですかね?
また考えが少しでもまとまりましたら、別エントリーで書いてみたいと思います。

ろーじー 2007年02月03日(土)23:52

>夕張市の事例を見てみると、美術館や博物館には住民から存続の動きが出てきているというのに、図書館にはそれが見られない

「愚智提衡而立治之至也」のG.C.Wさんもそのことにふれていらっしゃいましたね。
少し前、TVで(何の番組か忘れちゃいましたけど)夕張市民のおじいさんがね、「図書館で本を借りて読むのが一番の楽しみなんだ」と借りた本を嬉しそうに抱えながら仰ってるシーンを見たんですよ。
こういう方のためにも、図書館はやっぱり自ら存在証明しなきゃいけない、とはすごく感じます。

>私は財政再建に最も必要な公共施設は市立図書館だと思うんですけど

そのへんのことすごく伺ってみたいと思います。
この話題ちょっと引っぱりすぎちゃってごめんなさい。
利用者の立場としても考えることはすごくたくさんあると思います。またコメントするかもしれませんが、その節はよろしく・・・(^_^;)