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富の再配分機能は図書館には不要では?

 ・愚智提衡而立治之至也 「話がかみ合わない(^^;)」

 私もさんざ、反「貸出至上主義」の意見を書いてきましたが、G.C.W.さんの「数ある公共図書館の機能のひとつに過ぎない「貸出」を公共図書館の最終的な目的と位置付け,他の機能を「貸出」の増加に奉仕させることが公共図書館の発展につながるとする主義主張」という貸出至上主義の定義に激しく同意しつつも、あえて蔵書構成論的な見方で貸出至上主義を批判してきたところがあります。何故って?そりゃ、業界人同士ですら、貸出至上主義の定義があいまい(っつーより、貸出至上主義を守り抜こうという人にはG.C.W.さんの話は耳が痛すぎて聞かないだけなのだろう…)で話がかみ合わない中で、利用者などの一般の人にそんな業界のバックボーンが理解できない(いや、そんな内輪ネタは無理に理解しなくてもよい)だろう、というのが一つ。も一つは単なる選書や貸出のところだけを見ても問題はかなりあるから、なのだな。

 ま、あんま真剣に論じても稚拙になるし、主張は平行線なので核心は書きませんが、貸出至上主義を擁護する人の書き込みに対して、選書・蔵書構成論的な定義に乗っかってもなお抱いた、簡単な感想だけ記しておきます。
 公共図書館というのは公的機関だけど、「富の再配分」を実現してはいけない機関なんじゃないかい。もし富の再配分という機能を担うなら、図書館は低所得者にのみ図書館無料の原則を当てはめるべきで、ケチな人間ばかりを税金で満たしている理由はどこにあるのかいな。公共図書館を含め、図書館の最大の使命は「知の再配分」なんだがなぁ。極論だけど、そういう意味で「そもそもあまり利用はされないが良い図書館」は存在し得ると思います、現状では。だって、図書館員ですら図書館機能を理解できていないんだから、利用者が理解できるはずもなく、結果として現状では良い図書館(=貸出の多い、の定義ではまさに議論になりませんけど)でも利用者が少ないという(仮想)話は十分考えられますよ、その是非は横においといて。
 …何が言いたいかよく分からないですかい?ま、感想なのでこれ以上は何も説明しません。(何かあれば別エントリーで、ということで。)

G.C.W. Eメール URL 2006年04月26日(水)23:09

実は僕も「そもそもあまり利用はされないが良い図書館ってあるのでしょうか?」に反応しちゃった口でして(^^;).良いが故に利用されない(公共)図書館が無いとは絶対に言い切れないと思いますよ,ホントに.
「図書館無料の原則」については,以前僕の友人が同じようなことを言っていたのを思い出しました.そのときは「機会の平等」を盾に反論してみたのですが,アカデミーヒルズ六本木ライブラリーなど考えると,tohruさんの発想もありなのかな(^^;),と.

「図書館員ですら図書館機能を理解できていない」現状,もう少し何とかなりませんかねえ(sigh).学生に教えることが年々難しくなるじゃないですか.プンプン(-_-;).
 最後は愚痴になってしまいました.多謝m(_)m

tohru URL 2006年04月27日(木)21:55

G.C.W.さん、コメントありがとうございます。
図書館無料の原則については、色々考えるところありで、貧乏人だけ無料にすればいいと本気で思っている訳ではないのですが、ただ実態を見るとねぇ…ということで。もちろん暴論なんでありますが、いつかは考えを纏めてみたいです。
関係ないですが、今朝、何となくICタグ導入により、書架に読み取り装置を仕込むことで、開架資料の閲覧数(何回出納されたか)をカウントできるようにならないかな、そうすれば貸出以外の利用統計が出て、少しは貸出偏重からの脱却も図れるかも、などと取り留めなく考えておりました。F社でもN社でもよいので、検討してくれないかなぁ(すでに存在してるのかな?)…

G.C.W. Eメール URL 2006年04月28日(金)22:18

ICタグ導入の効用については,3年ほど前にマイナーな雑誌(一般には流通してません)に,別件にかこつけて(?)書いたことがあります(^^;).そこではICタグの導入で書架整理,蔵書点検さえ不要になる,厳格な管理も可能だと書きました.貸出カウンターが不要になることも含めて,公共図書館業界でICタグが忌み嫌われているように見えるのは,専門性を廻る「政治的」な理由もあるような気がします.

全称命題ではない 2006年09月14日(木)20:51

富の再配分というのは、税金の使い道としての、所得の再分配機能ということだと思います。これは、いわゆる公共性の「一つ」の根拠であって、十分条件ではありません。従って、図書館が富の再配分「のみ」の機能を持つとすれば、ご指摘のとおり、貧乏な人「のみ」にサービスすればいいのですが、図書館の数ある機能のうちの一つに過ぎないと思います。おっしゃる通り、知の再配分とか再分配という言い方の方がぴったりくるものがあると思います。知を個人や特定集団だけのものにしないということですね。

tohru URL 2006年09月15日(金)09:19

コメントありがとうございます。「富の再配分」は「知の再配分」の対義語として敢えて使ったもので、所得再配分機能という捉え方で結構です。もちろん日本は共産主義や社会主義ではありませんので、ご指摘のとおり全称命題ではなく、これを根拠に図書館無料の原則を批判するのは公共図書館の役割を無視した暴論だと考えております。ただ一方で公共図書館での実務経験からは、図書館なんてベストセラーや俗本をたくさん買ってさっさと貸せばそれでええんじゃ、という無料貸本屋としか思っていない人々を相手にするうちに、感情的に何故この人たちの欲求を多額の税金で満たさねばならないのだ、と思わざるを得なかったのです。で、こういう人たちを作り出し、且つ現状を良しとする貸出至上主義に対して批判をしているという訳です。図書館無料の原則の根底にあるのは知の再配分という概念であるにもかかわらず、その認識が欠けたままとにかくどんな本でも無料でどんどん貸出さえすれば図書館は正しい、という方向の業界の現状と将来を憂いてです。「知を個人や特定集団だけのものにしない」というのは、図書館無料の原則の精神を構成する大きな概念の1つだと思いますが、果たしてどれだけの公共図書館がこの事を認識した運営を行っているのでしょうか。先般の実名報道に対する対応1つを見ても答えは明らかですね。