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「指定管理者制度と公共図書館への導入について」レジュメ公開

前エントリから続き)

 現在、公共図書館(特に指定管理者制度未導入館)は、指定管理者制度に対し何らかの結論を出さなければならない状況に置かれているはずです。しかし、図書館職員、行政職員、利用者、議員、市民がそれを検討するに、全国的に共通な作業であるにもかかわらず、どういう視点が必要なのかを図書館に特化してまとめた資料はあまりないように思われます。そこで、前エントリに加えて、僭越ながら、先般「指定管理者制度と公共図書館への導入について」と題して図書館職員等に話をさせていただいた際のレジュメをここで公開します。これを機に図書館を変えたいという人の一助になれば…

 レジュメ「指定管理者制度と公共図書館への導入について」
 (PDFファイル)

 特に内容で強調したい点
・「利用者、住民、議会が導入を検討する材料として、自治体主導の情報だけでは情報が不足している可能性が高い。司書は足りない判断情報を社会に提供するために分析し、発信する必要がある。」
・「実は市民にとって不幸なのは、公共図書館に指定管理者制度が導入されること自体ではなく、どのような形態にしても、特に自治体側の公共図書館への認識が「無料貸本屋」のまま、図書館が運営され続けていくこと」

 レジュメを読んでいただくと分かると思いますが、私の基本的なスタンスは指定管理者制度の導入に賛成でも反対でもなく、それぞれの館、自治体の現状・実情、将来予測に基づいて検討し判断することだと考えています。また、私は現在公共図書館に勤める者でも、それを研究する学生でも、まして学者でもないので、図書館に関しては何も依るものがない立場です。それを理解していただいた上で、この資料や「指定管理者制度と公共図書館」に関しての意見・質問があれば、お気軽にここにコメントしていただくか、非公開を希望ならメール(資料にアドレス掲載しておきます)をいただきたいと思います。また、勉強会での資料配付はご自由にどうぞ。また、こういう話を直接聞きたい、こういう点について特に見解を聞きたい等という奇特な依頼があれば、可能な限り対応したいと考えていますのでこれもご連絡くださいと付け加えておきます。ただし、個人的立場での活動ですので、あまりに非建設的な議論、嫌がらせ的行為が続くようなら、このエントリごと削除するので、あしからず。

まる3 Eメール URL 2008年12月07日(日)00:06

今、指定管理者として図書館機能を有する施設に関わってます。協定期間も第二期目の半ばをすぎ、あと1年4ヶ月後はまだ白紙状態です。

そんな状況の中で、いかにして自治体の財政不安の時代において「持続可能な地域の公共図書館サービスを維持するための仕組みづくり」を考えていたりします。
そのような中で、今現在ひとつの方法論として考えているのは、設置自治体と指定管理者という当事者ではない第三者機関の存在こそ重要ではないか...との結論に至りそうです。しかもそれは、日本の図書館法にあるような館長の諮問機関でしかない図書館協議会ではなく、欧米の公共図書館であれば必ず存在している「図書館委員会(Library Board)」をつくることです。しかもそれは、地域住民の中から選ばれるメンバーであること。現状でも図書館友の会や図書館ボランティア、もちろん現状での図書館協議会のメンバーらによる「図書館委員会(Library Board)」の存在です。

僕は、「図書館の論点整理」の中で、図書館協議会や図書館委員会(Library Board)が取り上げられなかった事がちょっぴり残念に思っているのですが、ここはひとつ欧米の公共図書館システムを取り入れることが日本の公共図書館の未来に必要不可欠ではないか...との結論に至ってます。

制度的にはなんの根拠もないので、現状では難しいですが、例えば、地域で「NPO法人◯◯市ライブラリー・ボード」なんていうNPO法人を立ち上げて、そこが指定管理者を取り(経費的に大幅に削減ができる、理由は後述)、指定管理者になった暁には、有能で的確な図書館長を採用し、公費だけではまかなえない経費はライブラリー・ボードが資金調達をしてでも館長以下の有能なスタッフを雇用する...というモデルができるのではないか...と、考えています。

これが僕が考えている
 持続可能な公共図書館サービスのための指定管理者モデル
であり
 日本型ライブラリー・ボードによるガバナンスモデル
として考察している基本的な考え方なのです。

ま、何かの参考にしてください。
ではでは

tohru 2008年12月07日(日)09:08

まる3 様

 公共図書館に限る話ではなく、地方自治の「自」が自治体なのか、市民なのかの問題です。これは欧米型が善で日本型が悪というものでもなく、また時代によっても判断が変化するものだと考えます。

 そのような公共図書館経営を行うためには、前段としてそれを指向し実行する住民を図書館自身が創造し、多数にすることが必須ですが、現状の日本の公共図書館は瀕死の状態で、延命もままならない、とてもそんな将来の事なんて、と言ったところでしょうか。当面は、目の前の指定管理者制度導入にどう向き合うか、近視眼的な議論に終始するのでしょうが、これが消滅も含めた将来の公共図書館の姿を決める重要なファクターになるのだと考えています。

 このところの制度導入検討で、形骸化していた図書館協議会が少しは機能してきたのは、わずかながら前進した部分ではないでしょうか。

まる3 2008年12月07日(日)13:21

ライブラリー・ボードが存在している米国の公共図書館であっても、昨今の経済不況の中で閉鎖されている図書館があることもあるので、これが全てを解決する魔法のつえであるとは思っていません。しかしながら、本当の意味での「民主主義の基盤であり、実践の場である図書館」というモデルが出来るのではないかと、考えています。

また、糸賀先生が、図書館への指定管理者制度の導入によって、一番のメリットは図書館協議会をはじめとして地域の方々が図書館に関心を持つようになった事だ。と、いわれていました。直営vs指定管理者論も必要ですが、誰が地域の公共図書館に対して、義務と責任を負う「最高意思決定機関」なのかを明らかにする事のように思います。